複数性について(短歌12首)
注意力をできるだけ散漫にして よけられない夏がこっちへ来る
柔らかく髪の毛をかき上げるその淡い光で目の前にいる
歌ってる人だと思って見ていたら口パクだったことを言いたい
笑ってる顔が嘘っぽい 配管が剥き出しになってて今っぽい
多角形型に切られたキャンバスの変な絵画のような気持ちだ
ルールに沿ったり、無理やり離れたり、光がさすばかりのプールで
賭け金をどんどん巨大にしていって綺麗になる生活の細部は
どうしても言わなければならないことが初夏の晩夏のプール・サイドに
それぞれに目的があり乗り継いだ僕たちの無数のJR
いたる所で同じ映画をやっているその東京でもういちど会う
存在を知っているけど関わりはないものが好き 雪かきだとか
何か巨大なことが起こってる気がした、病院で/病院の近くで
複数性について/青松輝
(ネットプリント「第三滑走路 8号」より再録。2019年8月30日)
1998年3月15日生まれ。東京大学Q短歌会に2018年から所属。