LOVES/POEMS
LOVES
詩はすでに、ひどく傷めつけられている。そのすべてが、僕のせいだとしたら?
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複数的なポエジーの可能性のことを信じようとしていた。わたしたちは初めから複数として生まれた、それだけが理由になった。だけど、イージーな孤独の気分は、それらをすぐに単数的なものに纏めてゆく。街が光に犯されている。単数的な光に。
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さみしさは単数的で、恋は単数的で、欲望は単数的だ。悲しさも寂しさも、すべてひとつの球体に纏まっていく。ほら、すでに、僕たちの生活はひとつの画面で完結しているじゃない? まとめられていく僕たちの言葉、顔、スーパーチャット、意識すべてが、似通っていく。
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はやくきみの言葉で世界を台無しにしてくれ/きみのとがった舌で/食事に口をつけて/暗視の植物を植えて/目隠しを/して/血の出てしまったところを/舌でおおいかくして/狩猟本能にみちた/幼児性にみちた/台無しにさせてくれ/僕の舌で/僕の言葉で
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あなた自身がひとりでいることは複数的であり、僕自身もまた複数的でありうる。ひとりであることが複数的になる、僕たち自身が望むならそれは、マッチングアプリの中の運命。FATE、HEART、♡。
POEMS
きみはすでに、ひどく傷つけられている。それらのどれひとつとして、僕のせいではないとしたら?
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雪のなかを鳥たちは飛び去る、白い雪が縦に、黒い影が横に。それはシステム化された雪のポエジー。花を月明かりが照らす、カメラを接近させれば、花粉はきらめく。それはシステム化された花のポエジー。
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あたしはお前のことを全部知りたい。僕のなかの金髪の女の子が囁く。完璧な詩などといったものは存在しない。完璧な詩が存在しないようにね。僕のなかの政治家がマイクで絶叫する。それはそう、その通り、複数性について。
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わたしたちは今日/豪華な食事とプレゼントでわたしたち自身を祝う/それは/システム化された/運命の/ポエジー/わたしたちはいつも、夜をことばに置き換える/それは終わることのない/エクセルの/作業/感情を数値に起こして/お金をもらっている/僕たち
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あくまで僕たちは違っている。完璧な愛は存在しない。そのどうしようもなさ自体がどうしようもなくて、花のシステムと雪のシステムがズレていくことの不可能のなかに、僕たちのすべての喜びが降誕する。愛は存在しない、そのこと自体を愛と呼ぶことができる、あくまで、それを望むならだけれど。☺︎
(2021年の夏に書いた詩です。青松輝)